10横浜市金沢区に位置する野島海岸。ここは市内唯一の自然海岸でもあり、明治時代から海苔の養殖が盛んに行われていました。昭和45年頃には海岸線の埋め立てによって養殖事業が衰えるも、地元の生産者たちの手によって再び復活。野島沿岸では、今もなお海苔の生産が続けられています。そんな野島名産の海苔の販売元のひとつが「忠彦丸海苔」です。忠彦丸海苔では地産地消にこだわり、海苔の養殖から製造、さらには直売所での販売までを一貫して行っています。忠彦丸の海苔漁師でもある緑川和希さんによれば、海苔の美味しさは生育環境が命。河口に位置する野島には川から海苔の生育に必要なリンや窒素といった栄養が流れ込んでくるため、養殖に最適なのです。こうした栄養素が少ないと生育に支障をきたしますが、逆に多すぎても赤潮などの水質問題を引き起こします。海苔の生産事業は、環境を考えることにもつながっています。生育環境が品質に直結しているため、産地ごとに異なる風味を楽しめるのも海苔の魅力。その美味しさは、各地の豊かな自然が育んだ海の恵みでもあります。ぜひ日々の食卓で、海苔の味わい深さを堪能してみてはいかがでしょう? 海苔の養殖は、牡蠣殻を使った種の培養から始まります。胞子が糸状になったフリー糸状体(海苔の種のもと)を培養したら、牡蠣殻を養殖用の網に取り付けます。その後、漁場に立てられた支柱にくくりつけながら養殖網を広げます。海苔の胞子は網に付着して根を張り、日光と海の栄養で成長していきます。海苔の芽が十分に成長したら、摘み取りを実施。生海苔をすいて乾燥させた後、品質検査や加工を経て食卓に届けられます。〜地産地消を目指す野島海苔〜海苔ができるまで特集2town information海苔の力
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